復刊する復刊するといわれて早数年、ようやく文庫化された冲方氏の初期作品。以前作者のサイトだかどこだかで「ハイデッガー読んでこの話を書こうと思った」という内容の文章を見たときは、この人何考えてるんだろうと思いました(褒めてます)
簡単に内容をまとめると、様々な特徴を備えた種族が暮らす世界で、いかなる種族の特徴ももたない「のっぺらぼう」の少女ベルが、「唸る剣」(ルンディング)と己の技量を頼みに、己の由来を探す旅に出るまでの物語。
この巻に収録されている部分はまだ序盤も序盤なので、登場人物たちや世界設定の顔見世という要素が強目。初っ端からこの世界を表現する造語&ルビの嵐が説明もなく溢れかえってるので戸惑う部分もあるかもしれませんが、それに関しては読んでるうちに慣れる(多分)ので大丈夫なはず。段々自分なりのイメージが作られてくるのが逆にいいかも。
派手な戦闘場面が多いこの作品ですが、この巻の中で一番の見せ場になってるのはやっぱり第3章の死闘ですね。絶望的な状況に追い込まれてから、生き残った〈正義〉と〈悪〉の連合軍の反撃は凄まじいの一言。また、ここで剣楽に参加する面々が揃いも揃って格好良いんだよなぁ。
さて、ベルとアドニスの心に大きな哀しみを残しながらも、その死闘は幕を下ろしたわけですが。この先ベルは「剣の国」の試練を乗り越えて「旅の者(ノマド)」になることができるのか。彼女が「理由の少女」と呼ばれる由縁、「旧き擬神と楽園の民との戦い」等、まだ多くの謎を秘めたまま物語は続きます。
独り言。どうでもいいけど、表紙のベルと「唸る剣(ルンディング)」のイラストが個人的イメージとかなり食い違っていてどうにも違和感が……。この分だと、残り3冊でイラスト化される登場人物たちにもきっと違和感を持つだろうなぁ。
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『ばいばい、アース I 理由の少女』[冲方丁/角川文庫]
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